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2023.04.06

3DOM

スリーダムアライアンス独自のセパレータ「X-SEPA™」搭載の リチウムイオン電池、次世代リチウム金属二次電池の充放電サイクル寿命に関する 研究結果を報告

 

株式会社スリーダムアライアンス(本社:東京都港区、代表取締役社長:松村 正大)は、3月27日~29日に開催された電気化学会第90回大会において、スリーダムアライアンス独自のセパレータである「X-SEPA™」を搭載したリチウムイオン電池および次世代リチウム金属二次電池における充放電サイクル寿命に関して、2つの研究結果を発表しました。

「X-SEPA™」はスリーダムアライアンスが8年間の研究を経て開発したセパレータです。耐熱性の高いポリイミドに三次元規則配列に均一に空孔を形成することで、電池の「長寿命性」に寄与することに加え、信頼性および耐熱性の向上やハイレート充放電を実現した「3DOMセパレータ」を多層構造にしたものです。量産体制を整え、2023年2月より電池メーカーにX-SEPA™のサンプル提供を開始しました。

様々な分野で電動化が進む中、必要とされる電池の数は急増しています。化石燃料の代替が求められる一方で、電池は、製造時の二酸化炭素排出や資源の採掘、不十分な廃棄方法による土壌や水の汚染など、新たな環境問題を引き起こす可能性を秘めています。これらの環境問題を解決するためには、電池の寿命を延ばすことが求められています。

さらに、電池の大容量化に向け、現在普及しているリチウムイオン二次電池の性能を上回る二次電池が求められており、リチウム金属を負極に用いたリチウム金属二次電池は、原理的に高いエネルギー密度を備え次世代電池として注目されています。しかし、充放電時などで不均一なリチウムデンドライトの発生による電池寿命や信頼性の低下が実用化に対する大きな課題となっています。

今回の研究発表は、X-SEPA™を適用したリチウムイオン電池およびリチウム金属二次電池の充放電サイクル寿命についての科学的裏付けを更に強化するものでした。

 

①X-SEPA™とポリオレフィン系汎用セパレータ(以下、汎用セパレータ)を搭載したリチウムイオン電池の特性に関する比較評価
【結果概要】
X-SEPA™はその構造の特性上、高い空孔均一性と透過性を有していることから、リチウムイオン電池用セパレータとして用いた場合に、円滑なリチウムイオン輸送が必要となる高電流密度での使用下で、特に優れた性能を発揮することが期待されます。そこで本研究では、X-SEPA™と汎用セパレータを用いて、電池の比較効果検証を実施しました。

図1で示されているように、30サイクル~200サイクルの領域においてX-SEPA™を搭載した電池の容量維持率の優位性が確認されました。図中の矢印で示すポイントは、500サイクル後に0. 2Cで充放電した際の回復容量を示しています。異なるセパレータ間で回復容量に差が見られていることから、上記の維持率低下の差は抵抗上昇起因ではなく、可動リチウムイオン減少量の差であることが示唆されます。このことからX-SEPA™は汎用セパレータに比べ、リチウム電析の発生が低減されていることが推測されます。今回の結果から、高空孔ポリイミドセパレータはポリオレフィン系セパレータに比べ急速充電に適したセパレータであり、充放電サイクル寿命性能を伸ばす効果が確認されました。

②X-SEPA™によるリチウム金属二次電池の寿命・信頼性向上および大型二次電池への取り組み

【結果概要】
本研究では、高空孔ポリイミドセパレータのリチウム金属二次電池への導入検討として充放電サイクル特性などの電池特性への影響を調査しました。図 2に、X-SEPA™を用いたリチウム金属二次電池の充放電サイクル特性を示します。200サイクル後でも容量維持率が95%を示しており、充放電可逆性に優れた寿命性能を示しました。

今回の「X-SEPA™」適用電池の長寿命性に関する研究結果について、スリーダムアライアンスのCTO(最高技術責任者)であり、3DOMセパレータの開発者でもある金村 聖志 教授は次のように述べています。「3DOMセパレータを多層一体構造としたX-SEPA™の今回の研究成果は、近年、脱炭素化社会に対して強く求められるようになった長寿命の電池特性を明示したことになり、地球環境の改善に大きく貢献できることを嬉しく思います」

脱炭素化ソリューションを提供するシンガポール子会社noco-noco Pte. Ltd.(以下、noco-noco)は、X-SEPA™を搭載したバッテリの優位性を生かしたサービスを提供する予定です。バッテリの「長寿命化」は、二次利用などの循環利用を可能にし、電池の必要量を削減することで製造や廃棄から生まれる環境問題解決に貢献します。また、一回当たりの充放電コストを削減することも可能になり、電動化に対するユーザの金銭的な障害の解決にも貢献します。今後はX-SEPA™をリチウムイオン電池だけでなく、リチウム金属二次電池などにも適用することで、高いエネルギー密度を必要とする次世代用途に相応しいバッテリの提供も目指します。X-SEPA™搭載バッテリをサービスとして提供し社会インフラとして再定義することで、危機的な環境問題を緩和するためのバッテリの力を最大限に引き出すことに取り組んでいきます。

※ noco-noco に関する重要事項情報および将来に関する記述についてはスリーダムアライアンスの英語版プレスリリースをご確認ください。